起始異常のカテーテル治療のときに、冠動脈への挿入および治療時のバックアップを得られやすいことからもわかるように、多くの冠動脈起始に対して、対応可能であり、ファーストチョイスとして、当院で使用しています。また、Deep seatingも容易であり、バックアップを得やすく、技術によりカテーテルのパフォーマンスを上げることも容易なカテーテルである。
Ikari ガイドカテーテルはTRIに特化した先端形状を有し、左右いずれの冠動脈に対しても強いバックアップサポートをもたらすことが知られている。事実、その有用性は様々な臨床研究により証明されており、多くのTRIに習熟した術者から高い評価を得てきた。さらに昨年より複数のメーカーから異なった特性を持ったIkaritガイドカテーテルが提供されるようになった。中でも欧米を中心に高いマーケットシェアを持つLauncherガイドカテーテルを元に開発されたILカテーテルは、Ikariカーブのもつすぐれた特性をさらに活かす工夫が凝らされている。第一は大動脈を横断するカテーテルの第一・第二カーブの間のシャフトの剛性が従来のものに比べて高い点である。治療目標の冠動脈対側の大動脈壁に第二カーブを押し当て、バックアップを確保する点がILの特徴である。しかし透視上は強固にエンゲージできたように見えても、冠動脈内を進めたステントなどのディバイスが条件の厳しい病変に当たると、カテーテル自体が腰砕けになることがしばしば経験されていた。新しいLauncher Ikariではこの点において顕著な改善が見られる。第二は熱による先端形状の変形が起こりにくいことである。当院ではカテーテルを37度の温水に1時間曝したin Vitro実験をおこなった。その結果、熱による第二カーブの角度の開大の程度が従来の製品に比して、15度、約50%少ないことが明らかとなった。手技時間の長くなりがちなComplex PCIにおいて、この特性は有利に働くことが推察された。第三に先端カーブの変更である。実測で大動脈壁に押し当てられる部分である第2−3カーブ間の長さが約10%(2.5mm)延長された。これにより、対側の大動脈壁で応力を支える部分の長さが延長しバックアップサポートがさらに向上することが期待される。以上、この3点の改良により、Launcher ILカテーテルは、今後さらに多くのTRI術者の支持を集めるものと思われる。これからも、このLauncherカテーテルに限らず様々なメーカーの取り組みにより、Ikariカーブの理論上の優越性を一層具現化した新時代のILカテーテルが登場することが期待される。
Ikari ガイディングカテーテルの本質というのは、目的をもって能動的にアプローチするときに術者の意図するところに柔軟に向いてくれるという特性であると考えている。この長所により、冠動脈起始異常だけでなく、大動脈や肺動脈に自在にアプローチできる。この形ではこの場所にしか向かないというほかの多くのカテーテルと異なり、「なぜかかる」、「なぜかからない、じゃあどうすればいいのか」とと考えながら操作できるのは本カテーテルの最大の特徴である。
われわれはこれまで冠動脈に対して行われていた血管内視鏡を大動脈に応用した。それまでは、大動脈のある特定の場所についての観察の報告はあったが、上行大動脈から総腸骨動脈までをくまなく観察する報告はなかった。観察してみると、これまで5%以内と考えられていた大動脈プラークの飛散が冠動脈疾患及び疑い症例について80%程度というはるかに高頻度でみられることが判明した。本技術は大動脈における動脈硬化の成因、全身塞栓症(脳、皮膚、腎臓、下肢、その他の臓器)および急性大動脈症候群の早期発見、ステントグラフトやTAVIなどのインターベンションの術前評価、治療効果や合併症の評価に有用である可能性がある。この技術にILガイディングカテーテル(Heartrail II, Profit Plus)が最適であることが判明した。JRでは太い径の時に大動脈壁から距離ができてしまい、JLでは、引っかかって危険な印象がある。ILは血管壁に巧みに近づくがソフトであり、回転させても抵抗感がない。多少の屈曲があっても視野を得ることができる。現在我々の施設ではほとんどの症例でIL3.5を使用して、安全に施行できている。血流維持型血管内視鏡は急速に普及が進んでおり、現在ILガイディングカテーテルは大動脈内視鏡の標準カテーテルというコンセンサスができている。